タイムマシーンでおままごと

波多野友香の展覧会記録と日記。2017年3月から始めた#一日一枚絵の保存場所です。

タイムマシーンでおままごと

2017年9月17日から10月7日まで

名古屋市・栄のハートフィールドギャラリーで行った個展と、表題作のタイトルです。



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"海も島も あの人も

なくなっちゃうけど

なくならない


タイムマシーンに乗って

一緒にままごといきましょう


ここでは全てが赦される


ぺろ〜ん!"



(案内状に載せた詩)



2009年から発表を続けていて、その時から変わらず

「過去への振り返り」をテーマに制作してきた。


きっかけは、自分が昔住んでいた祖父母との家が、自分は何の連絡も無く取り壊され、更地になったこと。

祖父母、両親からしたら

「連絡するまでもない」

「古いものだから、なくなるものだから」

という理由で、更に大学の卒業制作を控えて、家にいるんだかいないんだかの私に連絡がなかったのは、今にして思えば理解出来ることだけど、当時は本当にショックだった。


「どんなに自分が大事に思っていても、いつかは無くなるんだ…」

「じゃあ自分は絵の道を進んでるのだから、絵にして残そう」


スタートの発想はネガティブだけど、

なんとか前に進む力に変えようと思い、祖父母と住んでいた家、よく連れて行ってもらった祖母の実家・養老の風景などを描いて来た。

(そして、そういった作品は有難いことに嫁ぎ先が決まりやすかった。

自分の"大切な思い出"という、ふわっとして弱く思われがちなものが受け入れられたようで、いつもとても嬉しく、感謝の気持ちを思い出しては枕を濡らすほどだった)


活動の中で

「自分にとっては大事だけど

人から見たら些細だったり、どこにでもあるものを

絵に閉じ込めてしまおう」

というステイトメントに変わっていった。


そして、ハートフィールドギャラリーで五度目の個展を行うことになった2017年。


この年は、自分もかつて働いていた場所「swimmer」のブランド終了発表を始め、大好きなお店が軒並み閉店、撤退してしまうクライシスイヤーだった。


もはや個人の力では抗えられない、絶対的な別れが突如来襲し、よっぽど2009年よりも「私はこれからどうすればいいの?」な年だった。


(2009年も勿論悲しかったが、祖父母は健在、両親と自分が住んでいた部屋のスペースのみが取り壊され、母屋は無事だったので、制作発表と時間薬で回復した)


人から見たら、大の大人が「好きなお店が閉店しちゃう…」レベルで落ち込むな、と叱咤されるのは承知なのだが、

対人関係のストレスを、可愛い無機物…

それも、役に立たない可愛いだけの無機物に救われて来た人間にとって、好きなお店がなくなるというのは、残機0でこれからの人生(hard mode)を歩めと言われてるようなものだった。


惑いながら個展に向けて制作していく中で、こういう時こそ前述のステイトメントを思い出して、気持ちを閉じ込めていこう、と思うようにした。


作品はタイムマシーンで、そこに描けば都合のいい場所、もう行けない、無い場所にも行ける。

そんなハイテクノロジーなものを使って、世界を変えるのではなく、おままごとをしましょう。


ごっこ遊びはささやかで、人によっては幼稚ななぞり遊びかもしれないけど、

私はそのおままごとで未来への推進力をもらって、

また現代に帰っていくね。


"ここでは全てが赦される!"


表題作に刺繍してある2匹のぬいぐるみ(ぬいぐるみなんです)も、この後自分達の時代へ帰っていきます。

そこで何が待っていても、このおままごとの時間を思い出して、進んでいこうね、ぺろーん!



ここまで読んで下さり、ありがとうございました。